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前ページ聖剣と、ルイズ その日、世界は変わった。 ルイズはその兵器を使える唯一の人間だった。しかし、誰よりそれの恐ろしさを知っていた。だから使うのを嫌がった。 あれほど魔法に執着していたのに、あの日から私がいくらからかっても、軽くあしらうようになった。その頃の私は、魔法が成功して余裕ができた、その程度しか考えていなかった。だけど、そうじゃなかった。 「魔法が最高だと思ってるなんて、幸せね」 あの、疲れた表情と言葉が、未だに忘れられない。そのときは、私は無邪気に憤慨できた。あの兵器の威力を見る前は。 天空に放たれた光は、跳ね返るかのように地上に降り注ぎ、狙った大地を焦土にしてしまった。私はそれを、あの塔のモニターという遠見の鏡で見てしまった。 私は理解した。メイジがどんなに束になろうと、これには敵わないと。 キュルケの回顧録より ルイズは、エクスキャリバーを使う気はなかった。誰がどんなに請うても、首を縦に振らなかった。たとえアンリエッタが興味本位で撃つよう頼んでも、エレオノールが脅迫しても。アカデミーの人間がどんなに調べても、それを撃つどころか、一部の起動すらできなかった。 それの威力を知っている、そしてそれを造ったのが誰か知っているルイズは、魔法に固執しなくなった。平民でメイドのシエスタやコック長のマルトーなどとも親しくなり、よく話すようになった。同級生たちにそれをからかわれたりしたが、爆破してやるとそれもなくなった。キュルケは、それをいい傾向だと見ていたが。 しかし、そんな平和な日々は続かない。急遽決まったアンリエッタ姫の学院視察、その日の夜。 「ルイズ、力を貸して欲しいの」 突然の姫の訪問に、しかしルイズは驚かない。遥か天空の機械の眼から、彼女はアンリエッタが寮に向かってくるのを見ていた。 望む望まないに関わらず、ルイズは巨大な力を持っているのだ。 それは遺憾ながら、コルベールの滑らせた口からアカデミーのエレオノールを経て、王室に伝わっていた。『ヴァリエール家の三女が強力な兵器を召喚した』と。 「今、アルビオン王家に叛旗を翻している貴族たち、レコン・キスタをどうにかしないと、トリステインが危ないの。彼らは聖地奪還を掲げ、ハルケギニアの統一を目指しているわ」 アルビオンで内戦が起きているのはよく『見え』ていた。日に日に戦線を後退させ、今では浮遊大陸の隅にある城に篭城している。あれは、ニューカッスル城といっただろうか。 「そこで、トリステインはゲルマニアと同盟を結ぶことになりました。条件は、わたくしがゲルマニアに嫁ぐこと。成り上がりのあの国には、始祖の血という正当性がのどから手が出るほど欲しいものですから」 それを聞いても、ルイズの頭は冷静だった。かつての彼女なら憤慨していただろうが、異世界のあらゆる英知が詰まったその頭では、それが『しかたのないこと』と理解できてしまった。強大な勢力が統一を名目に宣戦布告してくるかもしれない、そして自国の国力ではそれに対抗できない、ならば力のある隣国と軍事同盟を結ぼう、しかし相手は政略結婚を条件にしてきた。それだけだ。幾度となく繰り返された歴史が、また繰り返されるだけの話。 「……アルビオンに、同盟を阻止できる何かがあるのですね?」 「――――っ。ええ、そうよ」 考えてみれば簡単な話だ。同盟ができなければ、トリステインはレコン・キスタに滅ぼされる。逆を言えば、レコン・キスタはトリステイン・ゲルマニアの同盟をなんとしても阻止したい。しかし、妨害できる材料がなければそのまま放置しておけばいいのだ。わざわざそれをルイズに話すということは―――― 「私に、その『何か』を取り戻して欲しいのですね?」 「……ええ。城には既にレコン・キスタの間諜が入り込んでいるらしいの。だから、信頼できるあなたに頼みに来たのよ。危険なのは判っているわ、だけどあなた以外に信じられる人がいないの……」 そして、彼女は、ルイズが一番触れられたくないことに触れてしまった。 「それに、あなたにはエクスキャリバーがあるじゃない。あれはとても強力な兵器と聞い」 「あれを、使えと言うのですか」 アンリエッタの笑顔が凍りつく。恐ろしく低い、今まで一度も聞いたことのない底冷えのする声。アンリエッタは一瞬、それが誰の声か判らなかった。 「そ、そうよ。平民の造った物とはいえ、あれもあなたの使い魔なのだから、あなたを護ることくらいなら……」 「姫様。あれの威力、レコン・キスタで試してみましょうか。二度とトリステインに楯突く国家は現れなくなるでしょう」 ルイズの表情は笑顔。しかし、アンリエッタはその笑顔を生涯忘れられなかった。世界の全てを呪ったような、そんな笑顔だった。 それから数日間、ルイズは学院とアカデミーの人間にエクスキャリバーの運用を叩き込んだ。エレオノールと学院の生徒は反発したが、アンリエッタとオスマンの命令が下達されると大人しく作業するようになった。 そして、後にD-dayと呼ばれるその日、ルイズとアンリエッタと、枢機卿マザリーニをはじめとする将軍や大臣が、トリステイン空軍旗艦メルカトールに乗り、アルビオンに発った。様々な問題や文句が大臣や将軍からあがったが、姫とヴァリエール家の三女の説得は、それを黙らせた。乗員の中にはヴァリエール公爵などルイズの家族がいたが、ルイズの一言でこれも黙らせた。 「お叱りは、結果を見てからでもできます」 そしてその日、歴史上最も短く、最も犠牲者の多い戦争が始まった。 風石を大量に消費し、メルカトールはニューカッスル城上空に現れた。トリステインによる突然の介入にアルビオン王家、レコン・キスタ共々驚いたが、たった一隻の援軍に、片方に絶望を、もう片方に嘲笑を与えた。 しかし、それは一回の手旗信号により変わる。 『レコン・キスタに告ぐ。我はトリステイン公爵ヴァリエール家が三女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。即時降伏せよ。従わぬ場合は、光の鉄槌が諸君を襲うだろう』 レコン・キスタ側の空軍司令部、戦艦レキシントンの艦橋では、たちの悪い冗談だと思っていた。が、公爵家名義での通達だ、冗談では済まされない。 すぐに主砲をメルカトールに向け、返答を送る。 『こちらレコン・キスタ空軍司令サー・ジョンストン。その要求には従えない』 それが儀礼的なものとは、双方承知していた。 『了解した。トリステイン王国はレコン・キスタに宣戦布告する』 宣戦布告と同時に、ルイズはエクスキャリバーから持ってきた衛星通信機に声を吹き込む。 「作戦開始。目標、第一ポイント。敵旗艦」 外では将軍や大臣が敵主砲に怯えて騒いでいるが、すぐに大人しくなるだろう。今、艦橋にいるのは国の頂点に近しい者たちと最小限のクルーだけだ。即ち、アンリエッタ、マザリーニ、ヴァリエール公爵、ヴァリエール夫人、エレオノール、そしてルイズ。 「ルイズ、お前は、何をしたかわかっているのか?」 「もちろんです。ほら、お父様も敵艦を見ていないと。歴史の変わる瞬間を見逃しますわ」 「ちびルイズ! お父様に向かって……」 「あねさま。黙って見ていてください」 くるりとエレオノールに背を向け、エクスキャリバーに指示を出す。 「照射」 そして向き直り、 「これが、異世界の平民の力です」 その言葉と同時に、レキシントンは天空からの青い光に包まれた。 騒いでいた将軍大臣達、艦橋の人々、ニューカッスル城の王族貴族、そして、レコン・キスタ。レキシントンに乗っていた者と、光の下にいた者以外の、その場に居合わせた全ての人が、その光を見て唖然としていた。 たった数秒の、光の柱。それが、史上最大の戦艦を、消し去った。 「第二ポイント。敵主力戦艦群。照射」 時が止まったように動かない人々の中で、ただ一人、ルイズが淡々と通信機に命令を言う。 次に大きな戦艦が幾つか消え去った。 「第三ポイント。敵地上拠点。照射」 無慈悲にも、地上の野営地が焦土となる。 「後は指定ポイントを順次照射。民間人と市街には絶対に当てないよう注意すること」 その言葉は、さながら『元の世界』の軍人の様だった。 もう『照射』の声も無く、次々に光の柱が現れては消え、次々に人が、船が消えてゆく。 「どうです、姫様。私の言葉の意味が理解できましたか? 貴女は私に、『これを使え』と命じたのです」 ルイズは、震えていた。しかし、必死でそれを隠して、努めて平静を装い、アンリエッタに告げる。アンリエッタは、蒼白な顔で涙を流しながら、その光景を見ていた。 「これが、『所詮』と侮った異世界の平民の力、魔法の無い世界で造られた兵器。個人を護る為に使えるようなものではありません。大量殺戮と対空防衛の為の、文字通りの戦略兵器なのです。これが……私の、使い魔……エクスキャリバーの……真実……です」 「ああ……ルイズ……こんな、私は、こんなつもりじゃ……」 嗚咽と共に、アンリエッタは崩れ落ち、ルイズにすがりついた。 「ごめんなさい……ごめん……なさい……」 怖くて、泣きたかった。しかし、泣くわけにはいかなかった。ルイズは、強大な力を持ち、そして今、それを行使したのだ。泣いてしまったら、エクスキャリバーの威力を誇示するために人柱になった、消え去ったレコン・キスタの兵士に申し訳が立たない。戦争とはいえ、敵とはいえ、こちらのエゴで殺してしまったのだ。そして、この件に加担した学院の生徒、教師、アカデミーの人間に罪の意識を持たせぬために、ルイズ一人がこの殺戮の責任を負うために、ルイズ名義で宣戦布告をしたのだ。今ここで子供のように泣くわけにはいかなかった。 レコン・キスタの首謀者、オリヴァー・クロムウェル名義で降伏が宣言されたのは、それから十二分後のことだった。 前ページ聖剣と、ルイズ
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戻る マジシャン ザ ルイズ 進む マジシャン ザ ルイズ (2)分析+葛藤 「ふむ…この契約のルーン、悪くは無い」 ウルザはマジマジと自分の左手に浮き上がったルーンを見ていた。 魔法的構造までを解読するにはウルザを以てしても時間を要するが、効果だけは読み取ることが出来た。 1.武器に関する熟達 2.武器所持時の肉体の強化 3.術者に対する忠誠を対象の深層心理へ植えつける 要するに強化と忠誠。 シンプルだが実に強力なエンチャントである。 これを効果を拡大し軍勢に影響するように作り変えれば、新兵の軍団も一朝一夕で熟達の兵士となるだろう。 また、効果対象が個人のままであったとしても人間としての基本骨子にこれを刻みつけ、品種改良を続ければいずれ強力な力を持つ人間を作り上げることが出来るだろう。 ウルザはそれらがファイレクシア攻略の手助けになるとほくそ笑むのであった。 また、この世界についてウルザを喜ばせる原因は他にもあった。 今は夜、ここは学院の図書室である。 ウルザが手にしているのは、この世界、ハルケギニアの魔法体系についての本である。 この世界には火、水、風、土の魔法要素があるらしい。 一方ウルザが扱うマナは、赤、青、緑、白、黒である。 赤のマナで行う魔法は、四系統の中では火と土といったように、必ずしも一対一で相対するものではないようである。 一方で、この世界には根本的に白と黒のマナの魔法に相当する魔法は無いようである。 (黒の魔法にあたる死者の蘇生などは先住の魔法という形で存在するらしい) 何より、ウルザが注目したのは「虚無」である。 これは始祖ブリミルと呼ばれる何ものかが確立させた、今は失われた系統であるらしい。 どのようなものかまでは、この図書室では分からなかったが…ウルザの頭には一つの仮説が浮かび上がっていた。 「このような世界で、ファイレクシア攻略の手掛かりがみつかるとはな…失われた力を取り戻すまでの骨休みと思っていたが、そうもいかないらしい」 ルイズがもしこの場に居合わせたなら、ウルザの口元に浮かんだ笑みと、体中から滲み出るもので言葉を失ったに違いない。 朝 ルイズは自室のベットの上からぼーっと天井を見上げていた。 (ええと、染みが一つ、二つ…) 無為なことを考えながら、幽鬼のような表情で部屋の片隅を見る。 そこには、どこから持ってきたのか小さいながらもしっかりとした机が置かれている。 その机に向かい、何かの作業をしているウルザの背中。 どうやら何かを作っているようだが、何を作っているのかはわからない。 (私、どうしてあんなメイジと契約しちゃったのかしら……それに、私のファーストキスぅ…) 枕を抱いて涙目で転がるルイズ。 一応、昨日の晩に自分の中では決着をつけることが出来たのだが、一晩経つとまた挫けそうになるのである。 (そうよ、あれは執事みたいなもんよ!従者なの!本人も認めたんだから、執事みたいなもんなのよ!) ハルケギニアにおいて、メイジは貴族である。 当然、召喚されたメイジであるところのウルザも、何処かの貴族であると考えられた。 その点をコルベールやルイズが問い詰めたが、ウルザ本人は「記憶が混乱している」だの「記憶が欠落している」だのらりくらりと交わし、どこの貴族かは分かっていない。 そもそも杖を持ってローブを来ていたからメイジ、と言うことになっているが、本人が魔法を使っているところはまだ見ていない。 もしかしたら平民なのかもしれないが、「魔法見せて」というのも………正直怖い。 魔法をまともに使えないルイズでも分かる、あの貫禄と得体の知れない雰囲気。 きっとどこぞの名のあるメイジに違いない。 ヴァリエール家は公爵家であるから、身分で負けているとは思わない。 しかし他国の貴族、しかも記憶喪失の者を使い魔や従者として扱ってもいいものかと一晩悩んだのだ。 (もしも何処かの王家の縁の者だったら………) ―ぶるりと悪寒が走る。 (だから執事、執事なら文句ないでしょ!それに本人も使い魔になるのは同意してるんだし!) こうしてメイジを使い魔にする、という部分はルイズの中で一応の決着を見た。 問題はキス、乙女心な甘酸っぱい、青春のメモリーである。 (アレはノーカウント!ノーカウント!使い魔の契約なんだからノーカウント!じゃ無かったらお父様にキスしたのと一緒!そうなのよ!わかったルイズ!?) ごろんごろんと転がるルイズであった。 「お目覚めかな、ミス・ヴァリエール」 大丈夫、決着したと言い聞かせてルイズはベットから起き上がった。 「おはよう、ミスタ・ウルザ。それと昨日も言ったけどルイズでいいわ」 「そうだったね、ミス・ルイズ」 「じゃあ、起きて着替えるから…いいわ、外で待ってて」 「そうかね?てっきり貴族は従者がいる場合手伝わせるものだと思っていたがね」 「いいから、出ていって頂戴、ミスタ・ウルザ」 バタンと扉が閉まり、ウルザは外へ出て行った。 ルイズも最初は手伝わせようかと思ったのだが、あの色眼鏡に見つめられると思うとどうにも落ち着かなくなってしまったのだ。 何より、眼鏡の奥、彼の瞳に何か恐ろしいものが潜んでいる気がするのだ。 「?」 着替える最中、ウルザの机の上に作りかけの何かが置いてあった。 「何これ…鉄の、…動物?」 これは、…壊れてる ――炎蛇の魔道師 コルベール 戻る マジシャン ザ ルイズ 進む
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「迷宮キングダム」の四コマ「小鬼キングダム」より『小鬼小王』クロビスと宮廷メンバー一行 ルイズ・キングダム!!-1 ルイズ・キングダム!!-2 ルイズ・キングダム!!-3 ルイズ・キングダム!!-4 ルイズ・キングダム!!-5 ルイズ・キングダム!!-6 ルイズ・キングダム!!-7
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「ハヤテのごとく!」の綾崎ハヤテが召喚される話 ルイズさんとハヤテくんと-1 ルイズさんとハヤテくんと-2 ルイズさんとハヤテくんと-3 ルイズさんとハヤテくんと-3-2 ルイズさんとハヤテくんよ-4-1 ルイズさんとハヤテくんよ-4-2 ルイズさんとハヤテくんよ-5 ルイズさんとハヤテくんよ-6
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ルイズ imageプラグインエラー ご指定のURLはサポートしていません。png, jpg, gif などの画像URLを指定してください。 【来れない日時や曜日、時間帯等】 【称号/階級】 【好きなカード】 【使用デッキ】 【自己紹介】
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__ _, '"´ `丶、 / \ / ,' / / / ヽ `ヽヽ l l j __ // ,イ 、ハヽ }! ハ l l 「 j_从7ヽハ !七大 ` } リ }/ | l Vf゙仡圷/ jl ノィアト、ヘ// / j l l V_ ソ ´ V リ /jイノ ,' ハ ヘ. ' ` ,' l ! / / l ヽ ー ‐ .厶 |ハ //' ∧ 弋ト 、 __ , r<7 l ヽ / / / ∧ Vー、 Kヽ{ ヽ ヽ / /./ /¨} ',__∧_j_l ハ \ }/ ,′ l { / / / ヾ ☆Y ハ X { V r' / / \__j 入xぅ/ \ ヽ l { / / V //∠ ', } ! j/ / ! ∧V _二} ヽ / / / { 〈 l / | j/ -ーソ ノ / / / |ヽ \ l /∠/j rテ' 〃 ( ヽ ,. / / 、__jノ ∧{ / ,/ { _/ ハ `ー彡 / 〃 、__ > / ;>'´ /! ∨ヘ ヾ \ < _ ヽ {{ =ァ 彡< / { く{ ヽ ヽ ユ=―'´ ○━・━・━・━・━・━・━・━□━・━・━・━…━・━・━・━☆━・━・━・━・━・━・━・━◇ 【ルイズ】 LV:50 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール♀ 個体値 06 こうげき / 18C ぼうぎょ / 24B すばやさ / 29A- とくこう ./ 44S- とくぼう / 35A うんせい / 吉 初登場4スレ951 にとりんの牧場時代の親友 ツンデレで氷系呪文を得意とする たぶん、戦うことになるだろう…
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「天空宙心拳!旋風蹴り!!」 ロムがゴーレムに向かって蹴りあげるしかし、腕のガードによって防がれそのまま吹き飛ばされてしまった 「ち、ならば!」 瞬時に体勢を整えると飛ばされた先にある木を蹴りあげさらに高く跳んだ 「はあ!稲妻蹴り!疾風突き!瞬殺拳!!」 そのまま懐に入り込み、止まらぬ連撃を与える するとゴーレムはたまらず倒れてしまった 「ロム!」 ルイズが叫ぶ 「凄い・・・・、流石ダーリン、ゴーレムなんかに遅れを取らないぐらい強いじゃない」 キュルケが感嘆する 「・・・・・・・・」 タバサはじっと闘いを観察していた (土埃が濃くて視界が悪い!奴はいつ立ち上が・・・・うお!!) ロムの正面に巨大な拳が向かってきた これを蹴りあげ、三角跳びで手の上に乗り、顔に向かって腕の上を走った 「天空宙心拳!旋風二段蹴り!!」 全身を回転させながら強烈な蹴りを頭に二発、顔を削られてさらにゴーレムはのけぞったがロムの勢いは止まらない 「岩石砕きだ!!」 さらに顔に強力な一撃を叩き込み、ゴーレムは再び大きな音を立てて倒れた 「やったやった!ダーリンあのゴーレムをやっつけちゃった!これでフーケも」「いいえ!まだ動くかもしれないわ!!でもあそこまで削っちゃえばひょっとしたら私達でも」 興奮するルイズとキュルケに対して 「駄目」 タバサが冷たい一言を放つ 「なんで駄目なのよタバサ!ダーリンがゴーレムを押しているじゃないの!」 キュルケは反論するがタバサは続けて言った 「硬い」 「へ?」 「あのゴーレムは硬い」 「っで、でもロムは素手でギーシュのゴーレムを壊したわよ!」 ルイズもたまらず言うが 「それよりも硬い、もしこのまま彼が戦えば彼は直ぐに弱ってしまう」 「そ、そんな!それじゃロムは」 「やられちゃう」 ルイズとキュルケの顔が青くなる 「ロムを助けて!」 ルイズが叫ぶがタバサは首を振った 「近寄れない」 近寄ろうとするとゴーレムが拳を振り回すので使い魔を近づけることが出来なかった 一方ロムは (さすがに・・・・このまま闘えば俺の拳が砕けてしまうな。だがここで退くわけにはいかん! こいつを倒してフーケを捕まえる!ルイズの誇りの為に!!) そしてゴーレムが立ち上がる そして立ち上がったのと同時に拳が鋼鉄に変わる 「なっ・・・・!」 ロムが声を上げて驚く ゴーレムの拳がうなる、がロムは高く跳んで避ける 「さっきよりも速い!ここにきてまた強くなった!」 ルイズは苦戦するロムをなんとか自分が手伝える方法はないのか そう考えていてすぐに目に入ったのはタバサが抱えていた『巨人の剣』という名の杖だった 「タバサ!それを!」 タバサは頷いてルイズに『巨人の剣』を手渡す 見た目はただの大きな杖だ しかし自分の魔法はあてにならない、今はこれしか頼れない ルイズは深呼吸して、目を見開いた 「タバサ!私に『レビテーション』をお願い!!」 タバサが慌ててルイズに呪文をかける するとルイズは杖と共にゆっくりと地に降りた 「そこのゴーレム待ちなさい!ルイズ・ド・ラ・ヴァリエールが相手よ!!」 地面に立ったルイズは遠くに居るゴーレムに向けて怒鳴った 「ルイズ!来ちゃ駄目だ!!」 ロムも怒鳴る、しかしゴーレムの注意はルイズに向いた ルイズは思いっきり杖を振るが何も起きない、その間にゴーレムはどしどしとルイズに向かって言った 「なんで何も起きないのよ!本当に魔法の杖なのこれ!!」 ルイズは前を見てゴーレムが自分に近づく事に気付くと真っ青になった 「いやあああああ!」 ルイズが叫ぶ 「ルイズ!!」 ロムも思いっきり叫んだ その時だった 左手の甲に刻まれたルーンが突然強い光を放った 「何!」 ロムが突然の事に驚く それと同時にルイズの持っていた『巨人の剣』も強く光った 「な、なんなのこれ!?あっ『巨人の剣』が崩れて!?」 空にいるキュルケとタバサもその強い光に驚いていた 「タバサ!これは!?」 「見当もつかない」 そしてルイズの方の光が止む 「こ、これが『巨人の剣』の!?きゃあ!」 ゴーレムは拳をルイズに向けるが しかしルイズは追い付いたロムに抱き抱えられてなんとか助けられた 「ル、ルイズ!それは!」 「こ、これが『巨人の剣』の正体みたい・・・・」 ルイズの手の中にあったのは、白銀の身が美しい剣、その柄には狼の印が付いていた 「『剣狼』・・・・」 ロムが呟く 「剣狼!?それがその剣の名前!?」 ルイズが大声を出す 「ルイズ!その剣を俺に!!」 「は、はい!」 ルイズは『剣狼』と呼ばれた剣を渡すとロムから降りる しかし容赦なくゴーレムは一撃をぶちかまそうとしていた 「ヴァリエール!!」「危ない!」 キュルケとタバサが叫ぶ 「きゃああああああああ!!」 「天よ地よ、火よ水よ、 我に力を与えたまえ・・・・!」 ロムがそう呟くと剣は再び光、宙を舞った 大きな鈍い音がした 「あれ・・・・?何ともない・・・・?どうして?」 ぎゅっとつむっていた目を見開くとそこには 「青い・・・・ゴーレム・・・・?」 フーケのゴーレムよりは一回り小さいが、蒼く輝く巨人がそこに立っていた 光のエネルギーが頂点に達した時 ロムは剣狼を通じて次元を越え 光の巨人を呼ぶことができる 巨人と合身した時、ロムは更なる力を引き出す事が出来るのだ!! 「闇ある所に光あり 悪ある所に正義あり・・・・ 天空よりの使者!! ケンリュウ見参!!!」 「・・・・凄い、あれが巨人の剣の力?」 「ダーリンが、ゴーレムになっちゃった・・・・!」 その様子を見ていたタバサとキュルケが目を見開て驚く 「ロ、ロム!?あなたなの!?ロム!!」 「マスター、俺だ、安心しろ!すぐに終わる!!」 ケンリュウの中にいるロムが言う するとケンリュウは自分よりも一回り大きなゴーレムを持ち上げ前に投げた ゴーレムは何も出来ずに森の中に落下していく 「出ろ!剣狼!!」 ロムが叫ぶとケンリュウの頭の上が輝くと、その中から巨大な剣狼が現れる 「さあ、これで終わりだ!!」 ケンリュウが剣狼を手に取り構える ゴーレムは木を薙ぎ倒しながら立ち上がり腕を広げてケンリュウに向かって突進する! 「とあー!!」 ケンリュウは高く跳んだ! 「天空真剣!稲妻二段斬り!!」 そしてゴーレムを上から切り裂き、更にもう一撃を与える! 「成敗!!」 ロムがそう叫ぶとゴーレムは四つに分かれ、倒れる そしてただの土の山になってしまった ケンリュウからロムが出てくる、すると闘いを見守っていた皆が近寄ってきた 「ロム!凄いわ!やっぱり私のダーリンね!」 キュルケが抱きついてきたそして未だに放心状態のルイズに対してロムが言った 「マスター、戻ってきたぞ。ゴーレムも倒した」 ハッとなったルイズはロムに顔を向けた 「当然でしょ!私の呼んだ使い魔なんだから!!」 そして顔を赤くしながら言った 「フーケはどこ?」 タバサの一言で全員が一斉にはっとした 「そうだ、奴を捕まえなければこの事件は終わらない!」 ロムがそう言うとケンリュウは消えて、そこには剣狼だけが残っていた 辺りを偵察に行っていたロングビルが戻ってきた 「ミス・ロングビル!フーケはどこからあのゴーレムを操って・・・・」 キュルケがそう言うとロングビルはわからないというように首を振った 四人は土の小山を探しロムは地に突き刺さった剣狼を見つめる 「何故あのような状態で剣狼が?俺と一緒にこの世界に来たのでは無いのか?」 そう思って剣狼に手をかけようとするが、突然横から走り抜けたロングビルに奪われた 「ご苦労様」 「ミス・ロングビル!どういうことですか!?」 ルイズが唖然としてロングビルを見つめる 「さっきのゴーレムを操っていたのは私、ごめんなさい」 「え、じゃ、じゃああなたが・・・・」 目の前の女性は眼鏡を外し、優しそうな目はつり上がり猛禽類のような目付きになる 「そう、私が『土くれ』のフーケ!さすがは『巨人の剣』ね。あのゴーレム、スクウェアクラスの作り出すそれよりも強力だったわ!」 剣狼を四人に向けて掲げる、タバサが杖を振ろうとするが 「おっと。動かないで?動いたら今すぐあのゴーレムを呼んで貴方たちを踏み潰すわ」 仕方なくルイズ達は杖を放り投げる 「どうして!?」とルイズが叫ぶ 「そうね・・・・ちゃんと説明しなきゃわからないわよね。 私ね、この『巨人の剣』を奪ったのはいいけど使い方がわからなかったのよ。 振っても振っても魔法をかけても何も起こらない・・・・。使えなければ宝の持ち腐れ、そうでしょ?」 フーケが妖艶な笑みを浮かべた 「それで俺達をおびき寄せて使い方を知ろうとしたのか」 ロムが睨みながら言う 「そうよ、魔法学院の者だったら知っててもおかしくないでしょ? まあ知らなかったら全員ゴーレムで踏み潰して次の連中を呼ぶつもりだったけど。 でもその手間は省けたわ」 フーケは笑う 「じゃあお礼を言うわ!さよなら!」 フーケは空に掲げてケンリュウを呼ぼうとした それと同時にキュルケは目をつむった タバサとルイズも目をつむった しかしロムが言った 「そいつは俺しか使えない」 「あなた何を言っているの?」 フーケが言い返す ロムが構えるとフーケは剣に向けて強く念じたが何も起きない 「な、どっどうして!?」 フーケが怒鳴る 「言ったはずだ、それは俺しか使えないと」 「あ、あなたいったい・・・・何者・・・・」 フーケは唖然としながら後ずさりするが、ロムはその瞬間に後ろついて言った 「お前に名乗る名前は無い!」 そしてフーケを気絶させて剣狼を拾いあげる 「ロム?」 ルイズ達は目を丸くしてロムを見つめた 「さあ、これで一件落着だ。早く帰ろう」
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前ページ次ページルイズの魔龍伝 5.ルイズとクックベリーパイ 「さて、ここへ呼んだ理由は分かるかの?ミス・ヴァリエール」 「…私の代わりに使い魔が戦ったとはいえ決闘に応じてしまった事と、それで壊した中庭の事でしょうか」 本塔の最上階に位置する学院長室、ルイズとゼロの目の前には杖を手にしたオスマンと その横にコルベールが真剣な眼差しで立っていた。 決闘後、直ちに使い魔ともども学院長室に呼び出されたルイズは一体どんな処分が下されるのか不安になっていた。 修理費用の請求に関しては次の仕送りまで多少、金額的余裕があるので大丈夫だ。 しかし「あのゼロのルイズがとうとう決闘問題を起こした」となれば実家の方にも話が伝わって あとはもう実家の両親とアカデミー勤めの長姉による不祥事説教祭りが始まるに違いない。 「あー…決闘に関しては事情を聞けばグラモンの馬鹿息子が原因のようじゃからお主は不問じゃ。 中庭も教師達が完全に修復したわい、かかる費用も請求せん。」 と、不安で青い顔をしているルイズに言い切ったオスマンが手にした杖をゼロに向けた。 「この使い魔殿について知っておる事を正直に話せば、の話じゃが」 「俺だと?」 「私達も騒ぎの一部始終を見…他の者から聞いたのだがゼロ…ガンダム殿で良かったかな? 君が放ったあの雷、あれはトライアングル…いや、純粋に威力だけで見るならスクウェアクラスに匹敵する」 「トライアングル…スクウェア…?」 「何?ミス・ヴァリエールからは何も聞いてないのか?」 「もっ、申し訳ありませんミスタ・コルベール!あのね、“トライアングル”“スクウェア”っていうのは 一回の詠唱でメイジが組み合わせられる属性の数を表すの、これはそのままメイジとしての技量を表すわ。 一つでドット、二つでライン、三つでトライアングル、四つでスクウェア、スクウェアは最高位のランクよ。」 「模範的な回答で何より。その最高位のレベルと同じ威力の雷が出せる使い魔で、しかもこの世界には 存在しない種族ときている。我々としてもミス・ヴァリエールを信じたい所だが……」 「俺の存在がこの世界の脅威になるのではないか、この娘が俺を上手く扱えるか、という事か」 「すまないがそう受け取ってもらって構わない」 「ミスタ・コルベール!私が召喚した使い魔なんですから私がしっかりとこの使い魔の手綱をとってみせます!」 コルベールの言葉に自信満々と答えたルイズだが、あの雷がルイズに不安を与えていた。 どんな使い魔にも負けない威力のあの雷を持つ使い魔を…私は扱えるのだろうか? 「…この娘の手足となって色々とこき使われる気はないが、別にこの世界にとって 脅威になるような事はしない。俺の剣は悪に轟く雷鳴だ」 そう言ってゼロは、昨夜にルイズと話したのと同じ事をオスマンとコルベールに話した。 「成る程、スダ・ドアカというこことは別の世界で騎士をしていたと…」 「あぁ」 「にわかには信じがたいが異世界という存在とユニオン族…君のような姿をした種族がいるとはまた興味深いね。 その世界の騎士はみんな君のような事が出来るのかい?」 「いや、そういうのは俺の剣の流派だけだ。騎士は剣で戦ったり機兵という巨大な機械の操手を勤めるのが一般的だな」 「剣術!雷を繰り出す剣術とは実に興味深い!しかも今の“キヘイ”とは何かね!? ゴーレムの類?うぅむこれは興味深い、後で私の研究室に来てみないかね!悪いようにはしない!」 「なっ!?」 「ミスタ・コルベール、そこまでにしときなさい」 「あ、えぇ申し訳ありませんオールド・オスマン」 ゼロに迫るコルベールをオスマンが制し、その様子を見てルイズは唖然としていた。 「ミスタ・コルベールって前々から変わってるって言われてたけど…これは…」 「ともかく、話を聞いた限りではこの世界の脅威となり得る存在ではない事は分かった。 今までの非礼、どうか許してはくれまいか」 「いいさ、しかし事情は分かったからといって俺も死ぬまでこの世界にいるつもりはない。 元の世界に返れる手段ぐらいあるだろう?」 「それがじゃのぅ…本来はこの地におる幻獣を召喚する魔法ゆえに送り返すという方法は 今まで取られた事もなく、そういった手段も存在しないんじゃ」 「存在しないだと?それじゃあ俺は一生をこの世界で終えろというのか!?」 「我々の方でもその手段は極力探してはみるが…どうか、それまではどうか ミス・ヴァリエールの使い魔を勤めてはくれないか、ゼロガンダム殿」 「…それならば止むを得まい」 「そう言ってくれると、助かるのう」 オスマンとの話が終わり学院長室から退室しようとするゼロに、オスマンが何か思い出した様子で ゼロに一言問いかけた。 「時にゼロ殿、「ムーア界」という名前に聞き覚えは?」 「…すまないが無い」 ムーア界という言葉は何となく聞いた覚えはあるが、明確には覚えておらずこう返すしかなった。 「近い内にゼロ殿だけご足労願えるかの?そのゼロ殿が来た世界の事で話がしたいんじゃ。 ヴァリエールのお嬢ちゃんには悪いが二人きりで、の」 「情報になりそうな事ならいつでもいい、どうせここの生徒でもないし時間はある」 そうして部屋を退室したゼロとルイズ。 二人の間のちょっと微妙な空気の中、ルイズがゼロに話しかけた。 「ねぇ、ガンダム」 「何だ?」 「…やっぱり元の場所に帰りたい?使い魔って、そんなに嫌なの?」 いつも高飛車な調子ではなく相手の様子を伺うように話しかけるルイズ。 「見知らぬ世界に来ていきなり下着を洗えと言われたらそりゃあ嫌だろう」 「まだ昨日の事根に持ってるの?まったく…」 「だが、元の世界に帰りたいといえば…どうだろうな」 「え?」 「…あの世界での俺の戦いは終わった。それからは、後に続く者達のやる事さ」 ゼロは考えていた。雷龍剣と自分の宿命が終わった今、あの世界に自分は不要だと。 そんなゼロをよそに何とも要領を得ないルイズだった。 ごぎゅうぅ その時、どこからか気の抜けた音が聞こえてきた。 「何?今の音…」 「あぁ、そういえば昼食を食べ損ねていたな…」 この音はゼロの腹の音だった、クスリとしながらルイズが話す。 「じゃあガンダムは私の授業に付き合わなくていいわ、厨房に行って来て何かもらってきなさい」 「いいのか?」 「派手に勝った使い魔が腹の音をさせてたら主人の私が恥ずかしいわ」 という事で、空腹のゼロはルイズと別れ厨房の方へと向かった。 「あ、ゴーレムさん」 「おぉっ、こいつが“ヴァリエールの小さなゴーレム”か!確かに変わった形してんなぁ! こいつがあの貴族の坊っちゃんをひーこら言わせてたとはねぇ」 厨房に入ったゼロを出迎えたのはシエスタと、コック服を身に纏った太っちょながら精悍な顔つきの顔の男だった。 「こちらはコック長のマルトーさん、厨房で一番偉い人ですよ」 「おぅ!俺がこの魔法学院の味の番人、マルトーだ!」 ぐっと付き立てた親指を自分にびしっと向けながらノリ良く答える。 「俺はゼロガンダムだ、ゼロでいい。そういえばメイドの君にも名乗ってなかったな」 「そういえば私も名乗ってませんでしたね、私はシエスタと申します」 シエスタがゼロに向かって丁寧にお辞儀をする。 「本当に喋ってらぁ、お前さんゴーレムにしちゃあ変わってるねぇ」 その先入観を打ち破るように再びゼロの腹の音が鳴った。 「今の音…なんでしょうか?」 「…実はな」 「はぁっはっはっは!おめぇさんゴーレムじゃなかったのか!」 「ゼロさん…そういう種族だったんですか?」 「ここじゃそうらしいな、まったくこの世界のゴーレムというのを一度お目にかかりたいもんだ」 コック達の賄いシチューを食べながらマルトーやシエスタと談笑するゼロ。 物珍しさに他のメイド達やコックも集まっていた。 「あの決闘見てたぜ!すげぇ雷だったな!」 「アンタのおかげでシエスタが無事だったようなもんさね!」 どうやらあの決闘を見ていた者がこの中にも何人かいたようでゼロに話しかけてきた者もいた。 「おい昼間の忙しいって時におめーら何やってんだ!」 「す、すいやせんマルトーさん!」 厨房が笑いに包まれる中、空になった皿を見たシエスタがゼロにお代わりを持ちかける。 朝食を抜かれ決闘で技まで使ってしまったゼロにとって二皿目のシチューもあっという間に 腹の足しになってしまった。 「すまなかったな、皆の大切な賄いを2杯も馳走になって。 後で俺にも何か手伝わせてくれ。施しを受けた以上恩は返さねばならん」 「いいって事よ、貴族の野郎どもあれこれ文句つけて残すからな。 それにあんた貴族の使い魔だけど貴族よかよっぽど良い奴だ! これから飯はしみったれたパンとスープじゃなくて賄いのシチューにするよ! まったくあの量のパンとスープってご主人様って奴は使い魔を何だと思ってるのかねぇ」 マルトーに背中を叩かれているゼロにシエスタが話しかけた 「あの…実はあの後、あの貴族様がちゃんと謝りに来て下さって…。それで…私からもゼロさんに何かお礼を…」 「いや、礼なら俺よりルイズにしてくれ」 「え?でも決闘で勝ったのは…」 「そうだぜ、何も主人の肩持つこたぁねぇよ」 厨房でのやりとりや決闘騒ぎでで分かった事だが、ここではメイドやコックといった 魔法を使わない者は貴族に対してあまりいい印象を持っていないようだとゼロは感じた。 ギーシュのあの態度やルイズの無駄に高いプライドを思い返せば即座に納得する話ではあるのだが。 とはいえゼロも食堂でのルイズのやり取りにちょっと感心しており、。 「だが、俺はあくまでルイズが決闘を受けると言ったから受けて勝ったまでだ。 シエスタに対する横暴だって一番最初に止めたのはルイズであって俺は途中から割り入っただけだしな」 「そういえば…そう…でしたね」 「そんなもんかねぇ全く、貴族様ってのは分からんよ」 「あのギーシュという小僧よりは多少貴族らしいさ。ま、それを差し引いても色々と子供だが」 「お礼…どうしましょう…私に出来る事なんて炊事洗濯家事お菓子ぐらいしか……」 「ふむ」 その時、ゼロの脳裏に一つの単語が浮かび上がった。 夕食も終わりいわゆる自由時間である寮内、机に向かっているルイズの横では ゼロが自身の剣を抜いて眺めていた。 「勉強か?」 「魔法が出来ても出来なくても、勉強ってのは大事よ」 本を読んでいたルイズが顔をゼロの方に向ける。 「うわぁ、その剣ボロボロじゃない」 ゼロが手にしていた鉄剣は刃の部分が所々こぼれ落ちており、刀身も高熱に晒されたかのように あちこち変色していた。 「…あの技を使うのは久しぶりだったからな、つい力の加減を間違えた」 「それ、魔法なの?」 「魔法じゃない、俺の一族…“雷の一族”だけが使える雷龍剣の技だ。」 「でも魔法みたいじゃないのよ」 本を閉じたルイズが顔をゼロの方に向けたまま顔を机に伏せる。 昼間のあの技は確かに凄かったものの、魔法の使えない自分より遥かに凄いとなんだか自分が情けない。 そんなルイズの気持ちがちょっとふて腐れた声になっていた。 「使い魔が魔法を使えて……主人は魔法を使えない……おかしな話ね」 その時、部屋のドアを誰かがノックした。 「? 誰よこんな時間に」 ルイズがドアを開けるとそこには籠と下着を持ったシエスタが立っていた。 「あの…ゼロさんに頼まれていた洗濯物を…」 その瞬間、いつものルイズの顔に戻り剣を鞘に戻していたゼロをキッと睨む。 「ガ~ン~ダ~ムゥ~!!自分の仕事をメイドに押しつけてぇ~!!」 「す、すみませんすみません!洗い場を探しているのを見つけて私から引き受けたんです!」 「……まぁそうならいいけど、アンタ昼から謝りすぎよ」 「はいすみま…いえ何でもありません!大丈夫です!」 この娘、何だか放っておけない気がする。 まるで犬か猫でも見るような、そんな感情を抱きつつルイズは温かい目でシエスタを見ていた。 「フフッ、まぁいいわ。用はこれだけ?」 「あのですね、これを…」 シエスタの洗濯物をルイズが受け取りながらシエスタが手にした籠から何かを取り出す。 「これって…クックベリーパイ?」 「はい、お昼の時のお礼です。お口に合うかどうか…」 そこにはルイズの好物であるクックベリーパイがまるまる一ホール乗ったお皿が合った。 焼きたてのようでベリーの甘酸っぱい匂いとパイ生地の香ばしい香りがふんわりと鼻をくすぐる。 「あら、中々おいしそうじゃない。お茶淹れてくれる?」 「はい!只今」 シエスタが部屋を出た後、ルイズがテーブルにクックベリーパイを置いた。 このクックベリーパイ、自身の大好物であるためちょっと顔がにやついている。 「好きなのか?それ」 「あげないわよ~ガンダム」 「…俺は別に食べたいとは言ってないぞ」 ルイズのほくほくした顔を見てとりあえず自分の提案が正しかったと感じるゼロ。 しばらくするとカップとティーポット、皿にフォークやナイフなどが乗った盆を持ったシエスタがやって来た。 手早くパイを切り分けルイズにパイの乗った皿を置く。 「あの…ゼロさんもいかがですか?」 「いいのよ食べたくないって言ってたし~」 ルイズが嬉しそうな顔でパイを口に運ぶ。 「マルトーさんが忙しかったので、私が代わりに作ったのですが…お味のほうは…」 神妙な顔で味わっているルイズにシエスタは恐る恐る味を聞いてみた。 「……」 「…おいしい、おいしいわシエスタ!」 「あぁ…っ、ありがとうございます!」 シエスタの顔が瞬間的にパァッと明るくなった。 にやけた顔でパイを口に運ぶルイズと幸せそうな顔でルイズを見つめるシエスタ。 「クックベリーパイ、お好きなんですよね。ゼロさんから聞きました」 「あれ?そんな事は別に言ってないような……」 「何、今朝方お前が寝言で言っていたのを聞いただけだ」 「……こンの使い魔ぁ~!」 「黙って食え、折角シエスタがお前の為に焼いたんだ」 「し、仕方ないわねぇ。今回はこれで勘弁してやるんだから」 パイの美味しさに頬を緩めたりゼロの言葉に怒ったりころころと表情を変えるルイズと ルイズから美味しいという言葉を貰い微笑みながらやれお茶のおかわりだの彼女に世話を焼くシエスタ。 授業の爆発騒ぎにギーシュとの決闘と、今日は騒ぎが多かったなと思い返しながら二人を見守っているゼロ。 その時、また部屋のドアをノックする音が聞こえた。 「今度は誰?」 ルイズがドアを開けるとギーシュが立っていた、流石にいつもの調子ではなくちょっとバツが悪そうだ。 よく見ると頬が掌の形に赤くなっている 「や、やぁ…ルイズ…」 ルイズの幸せそうな顔が一気に「何しに来たのよ」というしかめっ面になる。 シエスタはやっぱりオロオロしており、ゼロは二人を一瞥して視線を窓の外に向けた。 「決闘に負けたから約束は果たすよ…その、君が最後になってしまったけど……」 「昼間のやり取りは僕が間違っていた、心から謝ろう。あの時はつい調子に乗ってしまったり 正論にカッとして禁止されている決闘を申し込んだり男として情けなかったよ。 決闘に負けた今じゃ……痛いほどよく分かる。」 「ま、反省してるようだし許してやろうかしら。 どうせそのほっぺ、モンモランシーか二股かけた一年の子に引っ叩かれたんでしょ」 「勘がいいね…モンモランシーに昼間の事を全部話した上で謝ったらまた一撃もらったよ… でも“これに懲りたら他の娘に手を出すのはやめてね”って許してくれたんだよ!? モンモランシーは僕を見捨てていなかったんだ!死中に活を見出したよ僕ァ!!」 「うっさいバカップルの片割れ」 「おごっ!!」 「さっきから一体なにやってるのルイ…あらいい匂いね」 「あ、もし良かったらいただきますか?」 「クックベリーパイね、じゃあちょっと頂こうかしら」 「キュ、キュルケェ!あんた私ののクックベリーパイを勝手に食べるんじゃないわよ!」 「あーら、このベリーの赤色はまさに私の髪のような灼熱のような赤だと思わなくて?」 「ギーシュ…遅いと思ったら今度はゼロのルイズに…っ!」 「どう見ても違うよモンモランシー!!僕は謝りに行って…」 「そうよこんなヘタレのキザ、あんたからあげるって言われてもそのままゴミに出す位いらないわ!」 「ギーシュがヘタレのキザだからいらないってぇ!?確かにヘタレでキザだけど聞き捨てならないわ!」 「かばってるようで抉ってるよモンモランシー……」 ルイズがギーシュをローキックでダウンさせている時に、騒ぎを聞きつけたキュルケがやって来て さっきまでルイズが座っていた席でクックベリーパイを味わっている。 そしてギーシュの様子を見に来たモンモランシーが勘違いをしてルイズと口論しており、 蹴飛ばされたギーシュがなだめているが時折二人からどつかれていた。 「やかましいな……だがルイズがいつもの調子に戻ったようだし、良しとするか」 飽きれながらゼロが眺めていたルイズの部屋の様子は、昨夜より少し騒がしく賑やかだった。 前ページ次ページルイズの魔龍伝
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マジシャン ザ ルイズ 進む 春の使い魔召喚の日、ルイズは召喚に成功した。 そして、それは前代未聞の使い魔の召喚であった。 ルイズが呼び出したそれは、杖を持ちローブを着たメイジらしき色眼鏡をつけ髭を生やした初老の男であった。 周囲を取り囲む学生達も唖然とする、勿論ルイズも。 「あ、あ、あああんた、誰よ」 人間を使い魔として呼び出すなんて、聞いたことが無い。 問われた男は、周囲を睥睨し呟いた。 「………ウルザ」 ウルザはプレインズウォーカーと呼ばれる多次元宇宙を渡る力を得た魔法使いである。 彼はドミナリアと呼ばれる世界に生を受け、彼の弟であるミシュラとの争い―兄弟戦争―の末に大陸一つを吹き飛ばしたことがきっかけとなりプレインズウォーカーとしての力に目覚めた。 それ以後、彼は弟を誑かした機械生命体が支配する暗黒の次元ファイレクシアに復讐を誓う。 そして、数百年にわたる準備の末、他の八人のプレインズウォーカー達と「ナインタイタンズ」を結成し、ファイレクシアの中枢へ攻撃を開始。 戦い、暴走、裏切り。 ナインタイタンズの仲間が次々と無念の内に帰らぬ人となり、ウルザ自身も囚われの身となってしまう。 ―そして、終幕の場面。 ウルザは彼と同様に捕まり、操られてしまった自分の子孫であり同志でもあるジェラードとファイレクシアの闘技場で対峙することとなる。 目前にはファイレクシアの王、宿敵ヨーグモスの姿。 ジェラードを倒しヨーグモスを葬ろうとするウルザ。 しかし、その願いは適わずジェラード首を落とされ彼は長い生涯を閉じたのであった。 (ここは…どこだ? ファイレクシアの闘技場では無いようだが…ドミナリアでもないようだな) 「あ、あ、あああんた、誰よ」 自分を召喚したらしい、桃色の髪の娘が問いかけてきている。 周囲を見回す。 どうやらここは教育施設か何かのようで、周りにいるのは10代の子供達ばかりである。 全員が同じような服装をしていることからも、この推測は的外れでは無さそうである。 例外として一人だけ禿げ上がった成人男性がいるが、これは教師だろうか。 正面に視線を戻し、桃色の娘を注視する。 「………っ!」 ぶるっと震える桃色。 どうやら召喚を行ったらしい娘といい、周囲の生徒といい、マジックユーザーであることは間違い無いようである。 その証拠にマナの流れが感じられる。 それならば、事情を話し協力してもらうことも可能であろうと思い至った。 「………ウルザ」 マジシャン ザ ルイズ (1)ワールド・シフト 「ミ、ミスタ・コルベール!やり直しを!やり直しをさせてください! 何かあの人!…ええと、ミスタ・ウルザ、怖いです!」 色眼鏡で直接に目を見たわけではないが、ウルザに見られた瞬間思ったのだ、「こいつはヤバイ」と。 「こらこら、初対面の人をいきなり『怖い』とは何ですか。 それに召喚のやり直しは無理です、契約をしない限り、進級できませんよミス・ヴァリエール」 そこで、これまで沈黙を続けてきたウルザを口を開く。 「ミスタ・コルベール、この世界は、なんと言うのでしたかな?」 「は?世界?それは一体どういう…」 「召喚の影響で記憶が混乱しているのです、教えていただけませんかな?」 「ああ、そういうことでしたか。 確かにメイジを使い魔として呼び出すというのは前例がありません、そういうこともあるでしょう。 この世界の名前はハルケギニアです。加えてここはトリステイン魔法学院です。」 「ハルケギニア…トリステイン…………聞いたことが無いな………」 それだけ聞くと、ウルザはぶつぶつと独り言を始めてしまった。 「ほら!ミスタ・コルベール!怖いですよ!何かぶつぶつ喋ってるし!あれ絶対マイワールドに引きこもる人種ですよ!」 「だからミス・ヴァリエール、やり直しは認められないと…」 「しかし!」 「ミス・ヴァリエール」 不毛な押し問答が正に開始されようと言うところで、案外早く思考の世界から帰ってきたウルザが声をかけた。 「おおよその状況は把握した。 私と『契約』しなければ、君は留年になってしまう。そして私は記憶が曖昧で右も左も分からない。 利害は一致している。 ここは契約をしてしまうのが丸く収める方法ではないかね?」 「けけけけ、け契約って、そんな!使い魔の契約なのですよ!ミスタ・ウルザ」 「…ふむ、使い魔か、長いこと生きているがそんな経験は初めてだが、中々に興味深い。 少なくとも私を使い魔にすればフェイジングをする以上の働きをしてみせよう」 「で、でも………」 話はメイジと使い魔として契約を結ぶという流れになってきたことで周囲の生徒達が騒ぎ始める。 「メイジがメイジを使い魔に!聞いたことが無い!」「しかもあんな凄そうなのを!」「でもおじさんでしょ?四六時中おじさんと一緒は…」 「つか、あの歳の差でキスは犯罪じゃね?」 ビビクッ! 真っ白に思考停止していたルイズであったが、生徒の一人が発した台詞で我に返った。 (そ、そうよ…わ、私のファーストキスの相手が、あんな、あんなお爺ちゃん…!) 「どうしたのかね。契約をしたまえ、ミス・ヴァリエール」 「早く契約を済ませたまえ、ミス・ヴァリエール」 周囲の生徒達も口々に「契約」と騒ぎ始める。 『契約』…『契約』…『契約』…『契約』…『契約』 ルイズの周囲を『契約』という言葉が渦巻き始める。 それらと場の空気がルイズの乙女心を侵食し始める。 (で、でもでも、メイジと契約しちゃうなんて前代未聞じゃない! もしかしたら歴史に残っちゃうかもしれないし、それにこの人、なんか凄そうな雰囲気だし、もしかしたらトライアングル…いえ!スクエアクラスのメイジかもしれないじゃない! そんなメイジを召喚しちゃう私ってば、もしかしたらスクエアを超える、それこそ虚無の魔法使いとかになっちゃうんじゃないの!? そうなったらクラスの皆に笑われて、ゼロのルイズなんて呼ばれなくて済むわ! わ、わ、私を馬鹿にしてた連中なんてそうなったら、……うふ、うふっ、ふふふふふふふふふふ) 「じゃ、じゃあちょっと屈んで頂けるかしらミスタ・ウルザ」 思考のループに嵌ってしまい口元が緩んでいるルイズであった。 「こうかね?」 「そ、それで大丈夫です」 乙女なルイズが心の何処かで静止しているのを感じるが、暴走した思考は止まらない。 ルイズは呪文詠唱を開始した。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 五つの力を司るペンタゴン、この者に祝福を与え、我の使い魔と為せ」 こうして彼女は4200歳ほど年上の男と口付けを交わし、使い魔の契約を交わしたのであった。 何事にも不測の事態は起こり得る。起こったならば予測の事態だったことにすればいい。 ――ウルザ マジシャン ザ ルイズ 進む
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前ページBRAVEMAGEルイズ伝 第一章~旅立ち~ その8 登場!土くれのフーケ 魔法学院には斜陽が差し、赤い景色が広がっていた。 一行は、ちょうどルイズの部屋の窓から見える光景、広い裏庭にてムサシを囲んでいる。 「なあ相棒ぉ、俺っちどうしてこんな状況になってんの?」 「わりい、おいらもデルフの力が本当なのか気になるからさ。よろしく頼むゼ、タバサ」 「了解した」 新たな使い手の元に渡った、魔剣デルフリンガー。 今、彼は剣としての初仕事をしようとしている。 「タバサー、有り得ないだろうけれど外さないでよ?どこかの誰かさんじゃ無いんだから」 「ツェルプストー、それは一体誰のことを言っているのかしらぁあ…?」 「あら、そのちっぽけな胸にお尋ねしたらどう?心当たりがおありなんじゃないの」 外野で一悶着起きている最中だが、その初仕事がタバサの手によって成された。 最初の仕事…それは『的』である。 **** 「はぁい、ルイズ。使い魔とおでかけしてたようね?」 「げ、ツェルプストー」 「げ、って何よはしたない」 買い物から学院に帰ってきた二人を出迎えたのは、ルイズの級友二人であった。 会うなり小競り合いを続けている様を見て、やっぱり日常茶飯事だなとムサシは苦笑する。 と、タバサの使い魔であるドラゴンが、顔を摺り寄せてきた。 「きゅいきゅいっ」 「おう、ただいま!悪いけど、今日は何も持ってねえぜ?」 「……今日、は?」 「?ひょっとしてこいつのご主人様かい? この間、おいらの飯を分けてやってたんだけど……」 「……」 無言で竜に手招きし、自分の使い魔になにやら耳打ちする。 ややあって騒ぎ立てた風韻竜の頭を大ぶりの杖で小突いた。 ムサシは苦笑した、他人に餌付けされるなということであろうか。 「おいらから何かやるのは、マズかったかな?」 「別にいい、ねだったのはこちらの方。迷惑だったのなら謝る」 「気にしないでいいぜ」 王国にはおしゃべりが多かったこともあり、口数の少ないタイプと付き合う経験が無いムサシ。 しかしコミュニケーションが取れないほどでは無いようなので一安心する。 ルイズの級友に迷惑をかければ、しっぺ返しは必ず来ると予想できたからだ。 主にゲンコツや平手で。 「それにおいらも、こいつといるのは楽しかったからな。ええっと……」 「タバサ。使い魔がシルフィード」 「そっか、おいらはムサシだ、よろしくな」 手短に自己紹介を済ませたタバサの視線に、ムサシは頭上に?を浮かべた。 なにやら剣を見る自分のように、値踏みをしているような……そんな雰囲気を感じたからだ。 「こ、コホン…それより、ムサシくん聞きたいんだけど」 「おいらか?」 と、ここで突然キュルケに指名され、己の顔を指さすムサシ。 そうよ、とキュルケがウインクを飛ばして応える。 「ねえ、何を買ってきたのか見せてくれない?私とても興味があるわ」 背の小さいムサシに視線を合わせるため、キュルケはしゃがみ込む。 170サントを越える身長のキュルケが屈めば、ムサシとはちょうど頭の高さが一致する。 おまけに胸元とスカートの裾が危険なことになっている、ルイズはムッとした。 「それならちょうどよかったゼ」 「おう相棒、早速出番かい」 そう言うと、鞘から背中の剣を抜く。 変わらず涼しい態度のムサシに、ルイズは何故かしたり顔だった。 「こいつのことルイズにも説明するところだったんだ」 「一体、このボロがどうすごいって言うの?とても信じられないけど」 一行は剣を持つムサシを囲んでいた。 彼のゴーグルの力が如何にも信じ難いルイズや、不思議な装備の数々に興味を抱くタバサはどこか神妙だ。 「私は信じるわよムサシく~ん。ね、早く教えて?」 キュルケの猫なで声が聞こえた途端にルイズの口角がひくついた。 彼女だけはいつもとペースが変わらないようである。 言い合いがまた始まりそうな気配をなんとなく察し、さっさと準備に入る。 待ってましたとばかリに滾る剣を鞘から引きぬき、ムサシは抜身のデルフリンガーを掲げた。 「待ってたぜ相棒、俺っちやる気マンマンってなもんよ」 「わりいな、まだ何を斬るってわけでもねえんだ」 「何ぃ?そらねえぜ、やり場のないこの気持ちをどこに向ければ良いのよ」 「多弁」 「おしゃべりな剣ねえ……」 タバサとルイズが剣のトークに難色を示す。 しかしムサシは気にしていない様子でゴーグルをかけ、この剣の秘密を読み解き始める。 「この剣は『ガンダールヴ』ってぇ奴の使ってた剣で、このサビは仮の姿らしいぜ」 「『ガンダールヴ』?……って、あの?」 「始祖ブリミルが従えたと言われる、伝説の使い魔のひとり」 今しがた自分で口にしたタバサも含め、その場にいた一同は息を飲む。 ガンダールヴ、が何者なのか知らない者はここにはいない。 皆名前くらいは知っている。 それほどの伝説的存在の使っていた剣が目の前にあると言う。 「おおそれだ!さっき言いかけたのはそれ、『使い手』ってなぁそのことよ」 「『使い手』?ムサシ君がそれだっていうの?」 「おうよ色っぺえ娘っ子」 武器屋で出会ったムサシを、デルフは確かに『使い手』と呼んだ。 傍にいたルイズもまた気にかかっていた言葉ではあるが、まさかそれがブリミルの使い魔とつながるとは思いもよらなかった。 「俺っちの前の『使い手』がガンダールヴ、二番目の『使い手』が今の相棒ってこった」 「おいらが、その『がんだーるぶ』と同じだってのか?」 「本当だったらすごいことよムサシ君、やっぱり私の眼に狂いは無かったわ!」 キュルケに抱きすくめられ、降ろしてくれよとムサシは足をばたつかせる。 そんな様子すら気にかからないほどルイズは考えに没頭していた。 ガンダールヴの剣、確かに伝説に名を馳せる剣である。 その剣に認められた自分の使い魔、ムサシ。 だとすると彼もまた『ガンダールヴ』なのだろうか? しかし目の前のムサシ、そしてデルフリンガーの人物像と今まで自分が読み聞いた伝説を照らし合わせる。 そして頷いた。 なんというか…… 「あんたらどっちも伝説ってガラじゃないわねぇ……」 「そりゃねえゼ」 「ひでえなあ娘っ子」 疑心まるだしのジト眼で見られ一人と一振りはがっくりうなだれた。片方は剣なのでよくわからないが。 すると、今まで静観していたタバサが不意に疑問を挙げる。 「ガンダールヴの持つ剣ならば、単なるインテリジェンス・ソードでは無いはず」 タバサの疑問は、当然と言えた。 伝説級の武器であり、マジックアイテムであると言えるデルフリンガー。 何も特殊な能力が無い、とは考え難い。 「何か、魔法がかけられている?」 「お、鋭えところをつくね、眼鏡の娘っ子。俺っちもうろ覚えだが……ええっと……」 「こいつには『魔法を吸い込んじまう力』があるみてえだぜ?」 すっかり自分の能力を記憶の彼方に封じてしまったデルフの代わりに、ムサシが説明する。 この能力ならば、なるほどガンダールヴが『神の盾』の異名を持つ所以にもなろう。 三人の少女はようやくデルフリンガーの正体に納得が行き始める。 すると、ここでキュルケが意地悪そうな笑みを浮かべた。 「ねえ、ルイズ。本当に魔法を吸収するか見せてくれない?」 「え」 「ムサシ君を疑うわけじゃないけどぉ~……やっぱりこの眼で見たいじゃない?それとも魔法の調子でも悪いの?」 明らかなキュルケの挑発的な態度ではあるが、あっさりとルイズは乗せられる。 耳まで真っ赤にして、やってやろうじゃないの!と肩を怒らせムサシの持つデルフリンガーの前に進み出た。 「ファイアーボール!」 吹き飛んだ。 そりゃあもう見事に吹き飛んだ。 ただし、吹き飛んだのはムサシでもデルフでも無く、その後ろ。 はるか上、学院の壁であった。 『固定化』の呪文がかかっている筈の壁に大きなヒビが入っている。 驚愕の表情で硬直したルイズに対し、キュルケは遅れて大笑いした。 「ルイズ、目でも悪くしたの?あんなところが吹き飛んだわ」 「ううううう、うるさぁーい!ちょっとズレただけよ!!」 もはや何度目になるか解らない口論が始まったがもはや慣れっこである。 当初の目的であったデルフの能力確認だが、言い出したタバサが魔法を使うとのことで決着はついた。 話はここで冒頭に戻る。 いよいよということで、言い争いも中断したキュルケとルイズも固唾を飲み、見守った。 ムサシがデルフリンガーを構え、距離を取る。 杖を向けてからふと、考えついたような顔をしてムサシのほうを向いた。 「風系統の魔法では確認が難しい」 「そっか、見える魔法で頼むぜ」 「わかった、威力を絞った『ウィンディ・アイシクル』を使う」 『氷の矢』ウィンディ・アイシクルはタバサの得意とする呪文である。 トライアングルスペルではあるが、威力を控えるという調節も容易であった。 「おーいデルフー、いくぜー!」 「うおー!俺っちこういう視線が集まる状態苦手なの!緊張して背中痒くなってきた~っ!」 「どこが背中なんだ?」 騒ぎ立てる剣自身をよそに、表情一つ変えずタバサによる氷の矢が放たれた。 「ホントに消滅しちゃったわね」 「嘘みたい……ホラ吹きのボロ剣どころか、伝説の剣よ!伝説の剣!」 俄に浮き足立つルイズ。 デルフリンガーの言うことに、偽りは無かった。 放たれた矢は、吸い込まれるように消えてしまったのだ。 思わぬ形で知った事実にすっかり舞い上がっているのだろう、ルイズは勢い良くジャンプして喜んだ。 「あー、効かねえって解っててもこちとらビビんのよやっぱ。まだ胸ドキドキしてら」 「どのへんが胸なんだ」 だがその伝説の剣と、伝説の使い魔は変わらずこの調子である。 例え事実であろうと、伝説の一端を担う者たちと誰が信じようか。 これでは漫才コンビのチビと一振りである。 ルイズは熱くなっていた自分がとたんに虚しくなり、小さな肩をすくめた。 「伝説って所詮…過去よね」 「あ、それひでえな娘っ子」 一同は脱力した笑いを漏らした(タバサを除いて) 夕日も傾き、そろそろ夜が近い。 各々が空腹を満たし、夜を穏やかに過ごし、明日へ備えて床に就く。 そう思っていた、矢先のことであった。 「あら……」 「雲?」 一行の周囲に、影が差す。 日は沈みつつあるが、まだ夜の闇が訪れるには早かった。 それに、ルイズは感じていた。 この寒気は何だろう。 まるで何か危機が迫っているような。 「違う、これは……」 「ゴーレム!?」 タバサがいち早く気付き、キュルケも次いで驚いた。 のそりと姿を表し夕日を遮ったのは、全長30メイルはあろうかというゴーレム。 それが足踏みで大地を揺らしつつ、こちらに近づいてくるではないか。 キュルケが悲鳴を上げて逃げ出したのを皮切りに、ムサシとルイズも後に続いた。 「何よあれ!?」 「まさかあれって噂になってる……」 「!貴族相手にドロボーしてる奴か」 「『土くれのフーケ』、確かに手口は同じ。これほどのゴーレムを使う賊は他にいない」 タバサが落ち着いた様子シルフィードを呼び寄せた。 ゴーレムは裏庭にいる自分たちなど構いもせずに真っ直ぐ宝物庫へと向かっている。 逃げるなら今だった。 しかしシルフィードに乗り込もうとしたのはキュルケとタバサのみ。 二人はUターンすると、そのまま走りだした。 「ムサシくん!」 「逃げろ、みんなっ!」 先んじて振り返ったのはムサシだった。 ゴーレムの足元まで舞い戻り、デルフリンガーを勢いづけて抜刀する。 「デルフ!待たせたな!」 「おうよ、ついに出番か!?」 「でやあぁーっ!」 宝物庫に拳を叩きつけ続けるゴーレムの脚を、据え物斬りの要領で断つ。 一本の線が刻まれたと思うと、そこから上は斜めにずり落ちた。 切断された膝から下はぼろぼろともとの土になりゴーレムのバランスは崩れる。 「やったゼ!」 「いや、まだだ相棒!」 無くなった部分を埋めるように、足元から土が盛り上がり纏わり付く。 やがてムサシに斬られる前と同じ状態にすっかり戻ってしまった。 上を見上げると、黒いローブの人影が肩に立っている。 どうやらあれがゴーレムの主らしい。 「くそ、これじゃキリがねえな」 「どきなさいムサシ!ファイアーボールっ!」 遅れて駆けつけたルイズが早速呪文を唱えるが、いつもの通りの爆発が起きる。 教室や舎の壁を壊すことはできても、今回ばかりはゴーレムの表面が弾けてそれで終わりだった。 後から後から補充され、まるで通用していない。 「ルイズ、お前の魔法は効かねえ!危ねえから離れてな!」 危なっかしい主人を守るため、ムサシは真雷光丸を抜いた。 そしてデルフと共に逆手に構えて、ゴーレムの脚へと飛びつく。 両の剣を交互に突き刺し、巨大な身体を崖に見立てて登っているのだ。 これぞ伝説の武具『ベンケイブレス』の力である。 「何よ……!?私が足手まといだって言うの!!」 ルイズの頭に血が上った。 実のところ、彼女はかなり焦っていた。 先程からフーケのゴーレムが殴りつけているのは、自分が爆破した壁。 すでにヒビが入っていたからこそ、今こうして砕かれているのではないだろうか。 ルイズは、責任感と、意地と、劣等感が綯交ぜになった気持ちが抑えられない。 「私が賊を捕まえてやるんだから……!!あんたみたいなチビに遅れは取らないわ!」 ルイズは、忠告を一切聞かぬまま爆破ばかりの呪文を続けた。 持ち前のプライドの高さは、彼女に逃走という選択を捨てさせた。 あるいは、勇敢な使い魔に対する嫉妬だったのかもしれない。 「あいつだな……おい!観念しな、ドロボー!」 ようやく巨大な身体を登り終えたころには、フーケの仕事は済んでしまっていた。 盗み出した品が入っているだろう箱を抱え、目深に被ったフードから人相は伺えない。 ただひとつ見えたのは、三日月のように笑う口元だけであった。 「年貢の納め時ってヤツだぜ!」 したり顔の盗賊に飛びかかろうとしたその瞬間、ムサシはふわりと自分の身体が浮くのを感じた。 いや、浮いたのでは無い。落ちたのだ。 フーケがムサシが乗っていた部分のみを、風化させた。 「うわっ…!」 この高さから落ちてはひとたまりも無い、とムサシは雷光丸をゴーレムに突き刺した。 なんとか落下も半ばでぶら下がることに成功するが、すでに仕事を終えたらしいフーケはゴーレムを歩かせた。 ゆらゆらと揺れ、しがみつくので精一杯だ。 「くっ……」 「ファイアーボール!!」 ルイズの一際大きな爆発がゴーレムのバランスを崩した、フーケも驚いたのか肩口にしがみついている。 だがその拍子に、ムサシの身体を支える雷光丸が、抜け落ちてしまった。 「うわあっ!」 「ムサシッ!!」 かなりの高さから落下したムサシは、裏庭の草地に叩きつけられた。 主であるルイズは、思わずゴーレムから目をそらして、使い魔の元に駆け寄る。 「ムサシ、やだ、ちょっと…」 「!!危ねえっ」 近づいたルイズを、ムサシは身体ごとぶつかるように突き飛ばした。 人がせっかく心配してあげたのに、だのご主人様に向かって、などといった非難が口をついて出る間もなく。 ムサシがゴーレムが足の下敷きになった。 「え?」 何が起きたのか少しの間、理解できなかった。 そして気づいたとき、ルイズの顔が色を失う。 自分の魔法がムサシを落とし、ゴーレムをよろめかせたのだ、と。 「むっ……」 口が強張り、舌がつっかえて喉が引っかかる。 絞り出せた叫びは目の前で土に埋まった使い魔の名のみだった。 「ムサシぃぃぃぃぃッ!」 **** フーケは目的を終えたからか、さっさと逃げてしまったようだ。 執拗に追おうとしていたルイズは消沈し蹲り、キュルケが先程から声を掛けているというのに反応を見せない。 そこに、シルフィードに乗って追跡していたタバサが戻ってきた。 「途中まで追跡できたけれども、見失った」 「ああ、ありがとタバサ。ってそれよりこの子なんとかしてよ」 見ればルイズの周りの草がすっかり抜かれている。 ぶちぶちと千切っては捨て、千切っては捨て、よほど先程のショックが強かったようだ。 「ね、ルイズ、あのね……」 「うるさい!うるさいわね!放っておいてよ!」 それまで項垂れたままのルイズがキッと睨みを聞かせ、弾かれたように金切り声を上げた。 目には一杯涙が溜まってはいるが、器用にも一粒たりとも零さずにいる。 これは最後の意地だろう。 「あ、あいつ、ホント勝手なんだから、私の言うこと、聞きもしないで、わたしの、わたしの」 呼吸を荒らげて、肩を震わせ、辿々しい言葉を吐き出す。 キュルケもタバサも何も応えずにいた、そうするうちにやがてルイズの声も勢いを失っていく。 「……わたしを庇って……わたしのせいで、あいつ」 「気にすんなよルイズ」 間の抜けた慰めの声なんて、一番求めていなかった。 空気の読めないのんき者に、ルイズの頭がカッと熱くなる。 「バカ!私はあんたみたいに気楽に……」 ルイズがはた、と気づいた。 この場に置いて存在しないはずの少年の声が聞こえた。 何故だろう、頭の中はぐるぐると回って考えがまとまらない。 そこには泥まみれのムサシがぺっぺっ、と土を吐き出しながらも無事でいた。 「あ、あ、あ」 「だから、さっきから喋りかけてたのに」 「…娘っ子ぉ、俺っち汚れちまったよ。なんか拭くもんある?」 「水の魔法で洗い流したほうがいい」 「あ、俺っち無効化しちゃうから駄目だわ、井戸どこ井戸」 皆、取り留めもないような話をしつつ、何か居たたまれなさそうにルイズを見ていた。 というか何故だろう、何でだろう。 ルイズは当然の疑問を口にする。 「なんで生きてるのよあんたーーー!!」 「『スチールボディ』ゲット・インだぜ!」 ゴーレムにぶら下がったあの一瞬、雷光丸でフーケのゴーレムから能力を吸収したのだ。 ゲット・インでエネルギーを吸収した物体は通常消滅する。 しかしストンプゴーレム、キングマンイーターのように内包するエネルギーが膨大なものは消滅に至らない。 今回もそのケースのようだった。 ちなみに、吸収した能力は短時間ではあるが、自らの肉体に鋼鉄の如き硬さをもたらすもの。 そのお陰で落下しても、踏み潰されても軽症で済んだ、まさに危機一髪という所だったわけだ。 ギリギリの所で果たした生還劇にも関わらず、ルイズは激怒した。 だがその実、ひどく安心させられて涙を隠すのに必死だっただけのようだ。 「ようし気をとりなおして……逃さねえぜ、土くれのドロボー!」 一方ムサシは泥まみれになり傷つきながらも、この場でたった一人わくわくしていた。 ようやく、求めるものにありつけそうだ、と。 前ページBRAVEMAGEルイズ伝